性能の行き着く先は美しさ

もはや退役してしまった世界で唯一の超音速旅客機(SSTコンコルド。改めてみてみると、その美しさに惹かれてしまう。戦闘機をただ大きくしたように見えるが、戦闘機はいわば戦うための剣であるが、コンコルドは鑑賞用の剣というニュアンスの違いがある。戦うための剣は肉を切るが、鑑賞用の剣は心を切る。どちらが人の心に影響を与えるかはわかるだろう(というか人それぞれだし)。
コンコルドが戦闘機と違うのはもちろんサイズだけではない。もちろんエンジンの位置や旅客スペースなどもあるが、今回の話とは関係ない。
コンコルドといえばそのデザインである。先ほど述べたように、コンコルドは美しい(ただし巡航中のみ)。旅客機としては明らかに鋭く、超音速機であることをわからせる機首。そしてオージー翼とコニカキャンバーを採用し、美しい曲面を形成する巨大な主翼。それらが組み合わさり、それは一つの芸術作品のように仕上がっている。
相変わらず前置きが長くなりましたが、不思議なことに高性能な機体は美しい、もしくは格好いいんです。前者で言えば先ほどのコンコルド、第二次大戦のスピットファイアなどがあります。後者で言えば、F-15F-14などの戦闘機です。不思議なもので航空機の人気投票をしてみると、上位にいる機体は必ず就役していた当時はある程度の性能をもつ機体なのです。逆に、低性能な機体は不思議と見ただけで低性能と分かるデザインである。まあ個性的とか愛嬌があるという理由で好きな人もいますけど、“美しい”や“格好いい”とはずれるので無視します。ちなみに例はXF-85ゴブリンとか。名前からして美しくないが、かなり愛嬌がある。スケールモデルで飾ってあげたいくらい。
つまり、高性能な機体は不思議と人間の美的感覚にあうのである。高性能といっても巨大なタンカーと高速ボートを見てどっちがいいか、と聞かれれば後者を指すだろう。人によって差もあるだろうが、車だろうが航空機だろうが、機動性が高いほど格好よく、そして美しく見えるのである。トラックとF-1マシン。輸送機と戦闘機。どちらも後者のほうが見栄えがいい。これは機動性を高めるためには無駄を一切排除しなくてはならず、その結果飾り気のない機体できあがる。飾り気がないのになぜ見栄えがよくなるのか、それは高性能だからだろう。どんなに着飾って外面上が美しくても、内面の美しさは変えられないからである。もしかすると人は、生まれつき性能の高いものが好きになるようになっているのかもしれない。
そんなこといっても、人の美的感覚には個人差があるからそうはいえない。しかし、統計的に見ると少なからずそういう「高性能、高機能なものに惹かれる」というのはわずかにせよあると思う。
人には五感がある。外面は視覚だけでしか感じれない。だが、内面は他の4つの感覚でなければ感じることは出来ない。1つと4つの差。たぶんそういうのが関係しているのだと思った今日この頃。