己が力見せるとき(前編)

以前より計画されていた作業が行われる。
その作業を前に(今)考えたプロローグ。



 分からないものに対し、人は二つ反応をとる。恐怖と興味だ。例えば幽霊。多くの人が恐怖し、同時にわずかな興味も持つ。テレビで心霊物の企画をやっていると見たくなるのも、興味のせいだろう。が、私の場合恐怖のほうが強いから、テレビは見ない。肝っ玉の小ささが自慢です。そして航空機はどうだろう。これも人によっては恐怖し、興味を持つ人もいるだろう。
 私は幼いころいろいろなものに興味を持っていた。というより、知らないもの全てに興味を持っていた。夜空に広がる宇宙、過ぎ去った歴史、そして乗り物。子供のころ将来なりたいものに「車」と言ったのは私です。そんな私が、最終的に興味を持ったのは航空機だった。なぜ飛ぶのか、そしてなぜ落ちるのか。生まれて初めて航空機に乗ったのは中学生のころの修学旅行だった。機種はB747。そのとき、いくら興味があるというより好きだった航空機だが、なぜか怖かった。初めて空を飛ぶという興奮よりも、堕ちるかもしれないという恐怖。友人たちにはフェールセーフががどうのと言って安心させていたが、結局私も怖かった。そう、いろいろ本を読むなりして航空機を知っていたつもりでも、結局なにも分かっちゃいなかったのだ。
 時は経ち、私は航空専門学校に入校した。航空機について学び、その安全性、そして危険性を学んだ。気がつけば、空を飛ぶことになんら恐怖を感じなくなった。そう、もう航空機は幽霊とは違う、分からないものではなくなっているからだ。



 などど言えることを夢見る「二等航空運航整備士回転翼航空機タービン限定」を受験中の私である。まだまだ航空機は分からないことだらけである。確かに一年と半年勉強し、かなりの知識を得た。例えば


Q.「何で航空機は飛ぶんですか」
A.「翼があるからです」


 という質問に答えれるようになったくらいだ。入校以前の私なら


A.「航空機の翼は上が膨らんだ上下非対称の形状になっており、上側を流れる風は云々…」


 という知識ばかりひけらかした説明しかできなっただろう。というか、この説明じゃ上下対象の翼を使ってるヘリは飛べん。航空機が飛ぶ原理を説明しようと思ってもそう安々と説明できない。空気の流れはもちろん、それに伴う気圧の変化、空気の粘性やらなんやら説明しなければならない。そんなこと説明してたら分からなくて帰って不安になるのが人間ってやつです。シンプルかつ的確に答えたほうがいいです。しかし問題は質問に対する答えが明確じゃないところ。
 ともかくそんなことが説明できるようになって進化したんだか退化したんだか分からない私ですが、その知識が試されるときが来た。それは、授業カリキュラムに含まれていない作業だった。


翌日に続く)←ええっ!?