ホワイトバースデイ

 雪が降っていた。今日は毎年一度しか訪れない貴重な一日。
 そして、それはひとつの大きな人生の節目。

 この日私達はいつものようにエプロンで機体のプリフライトチェック(飛行前点検)を行っていた。まだ点検の手際はよくなく、一つ一つ確認しながらの点検作業。でもそれは正しい。人間はいくつものことを同時にできない。小さなとき一歩一歩歩いた結果、今こうやって歩いているように、初めは一つ一つこなしていけばいいのだ。この日点検に要した時間は1時間。目標時間は40分、先はまだ長い。日々精進である。


 そして家に帰ってふと思う、「あ、もうハタチなんだ」と。そう、今日は人生で20回目の誕生日。そして私の年齢は今日で20歳なのである。19歳と20歳の差は17歳と18歳の差ぐらい大きい。つまり未成年から成年にランクアップである。お酒、タバコ、そしてアレやナニなど、何かといろいろできる年なのだ。だからといって何をしようとも思わない。タバコはすわないし、お酒は未成年のころから(略)、もといあまり飲まないし、アレやナニはアレでナニである。ともかくこの日はなんか疲れた。夕食もとらず久々に早く寝たつもりだったのだが、気づけば友人の部屋にいて、何人かで机を囲んでお酒を手に持っていた。


 だまされた…。


 何と言われて誘われていたのか覚えていない。確か私がカレーを作ったといったら、食べさせてくれみたいな話だった。なぜ誕生日というおめでたい日に鍋を持って雪の降りしきる中隣の寮(距離にして云10メ−トル)まで運ばにゃならんのだ。一応誕生日の祝いという話なのだが、扱いはそこまでよくない。夕食食べてないんだけどというと、ならピザでも食べようという話になり、割り勘で注文することになった。もちろん勘定に私も入っている。で、ジャンケンに負けた人が電話すると「本日は雪のため配達しておりません」とのこと。確かにさっき歩いてきた道はうっすらと雪が積もっていた。ということでさっきジャンケンに負けた人が原付で買出しに。5分後ずぶ濡れになって帰宅。どうやらすでに外はバイクが走れる状況じゃないほど積もっているらしい。どうも盛大にずっこけたらしい。ご愁傷様、といいたいが、他人事じゃなくどうも責任が私になりそうだったので、持ってきたカレーを食べて一件落着にしようということにする。が、あいにくご飯が無かったという落ち。で、結局カレー入りカップめん。誕生日祝いの料理はカップ麺だヤッホーイ!(酔ってる)
 で、友人の辛味酒から逃げるように帰宅。時間は深夜。外は銀世界だった。街灯が照らし出す風景はどこか幻想的だったが、今の私にとっては脅威でした無い。若干平衡感覚が無くなった体に積もった雪。無事に部屋まで辿り着いたのは、これは神が私にくれた誕生日プレゼントだったのだろうか?いかんいかん、明日も学校だから早く酔いを醒まさねば…。