小牧基地救難教育隊 見学

UH-60見学の日

よみがえる空で今が旬の、UH-60とU-125を見てきました。中の中まで。
今回はひらすらUH-60について学んだことをだらだらと紹介。
前代未聞の超長文を君は読破できるか!?
とりあえず書いた自分は読む気もしません。
UH-60を知りたい人はどうぞ。

 国家試験に合格し、晴れて回転翼航空機の二等航空運行整備士タービン限定を取得した今、次なる課題は就職である。航空機に触る仕事がしたい。そんな思いから航空専門学校に入ったのだが、その仕事につけるかはこの一年間に決まってしまうのである。
 航空業界、それもヘリコプターに絞ると就職先は狭い。有名どころに限定すると、東は東京、西は愛知である。狭い…。が、それに警察航空隊や自衛隊を含めるとその範囲は一気に広がる。
 で、企業見学というかなんというか、ともかく小牧基地に見学に行ってきました。私の学校の先生には自衛隊出身者が多いので、そういったことは結構容易なのである。カレンダーを見てわかるとおり、この日は日曜日、公務員はお休みの日である。休みの中わざわざありがとうございます。
 小牧基地の場所というと名古屋空港である。そこに現地集合することとなった。ちなみに見学に行く人数は私を含めわずか二名。これはわけがあって、本当はもうちょっといたのですがとんでもないトラブルでこの人数まで減少に減少を重ねた。で、その名古屋空港中部国際空港ができるまで利用していた空港であったため、行くのは容易だと思ったのだが…。あれ?線路を変えたらこんなに早いの?小牧空港に行くには途中でバスに乗り換えなければいけませんが、小牧基地は電車で直行。もちろんバス代も無くて費用も半分。これなら小牧基地に行ってから名古屋空港まで歩いたほうが金銭的にはいいのではと思ったり。といっても空港一周はかなりの体力を使いますが。


 電車に乗るには駅に行かねばならない。山奥、というか山の頂に寮があるので駅まではそれなりの距離である。自転車ならその駅も近く感じるのだが、盗難で有名なその駅に半日置いておくのは怖い。総合的に考えて原付で行くのが大正解である。が、この日も大荒れの天気。風速7メートルの風は容赦なく原付に直撃する。俺の魂の火はこの程度の風じゃ吹き消えないぜ!と思う気力も吹き飛ばされながらなんとか到着。とりあえず通りから駐輪所に入る道が工事中だったときはびっくりした。
 電車に揺られ小牧駅に到着。無人駅であるが、自動改札などは完備。料金は着いた駅で自己申告というどこぞの完全無人駅も早くこうなればいいのに。そこから隣の駅まで乗ると、それが最短距離なので駅員に疑いの目で見られるのは良心(?)が痛む。
 暴風吹き荒れる中、コンビニで時間をつぶし先生と合流。さっそく車に乗って基地の中へ。基地に入る理由を伝え、誰が何時に入るかなどの書類を書かされ、なんだかんだで基地構内へ。
 で、いろいろあって救難教育隊の格納庫前(正確には横)に到着。小牧基地といえばもうすぐ空中給油機が配備される場所である。それに伴いKC-767用の格納庫を作っているそうな。さすがにうろちょろできないので見れませんでしたが。そしていろいろと聞きながら格納庫の中へ。違う。学校の格納庫とは設備が違いすぎる。以前小牧基地の正面にある中日本航空㈱の格納庫を見ましたが、それよりも同等かそれ以上です。格納庫内の壁面に暖房完備、機体の洗浄エリアはもちろんあれやこれや。そして機体。UH-60とU-125のコンビがそこにはいた。近くでみるのはこれが初めてではない。いろいろな航空際で見たことはある。が、さすがに触ったりメンテナンスハッチ開いて中を見るのは今日が初めてである。コックピットを覗けばデジタル計器が並ぶ。ヒューズなどの有視界飛行前提の機体とは違い、計器飛行も十分考慮した計器板。サイクリックスティックとコレクティブピッチレバーには所狭しとトリムやサーチライト操作用のスイッチが並ぶ。当然操縦系統は3000psiの油圧作動。コックピットの上の辺り入力として4つのロッドを通り、ミキシングユニットで3つのロッドを駆動し、ローターブレードのピッチチェンジを行う、らしい。そもそも整備していたヒューズには油圧などどこにも使っていない機体なので、もともと国家試験受験レベルしかわかってないのに、高度な説明されてもわからないものはわからない。しかし、やはり油圧が効いている状態だと、巨大なブレードもちょっとした力で駆動できるのはすごい。さすが3000psi!わかりやすくヘクトパスカルでいうと、約20万hPa、気圧でいうと約200気圧。系統に穴が開いて、オイルが漏れようものならそこに人がいれば容赦なく切断されそうです。ちなみにベル206Bの油圧は600psi(約4万hPa)。それにしても、コックピットは計器に電源を与えるだけでかなりの騒音です。音の発生源はジャイロでしょうが、声を大きくしないと会話できないほどです。学校の機体はジャイロを回しても「キーン」という程度ですが、UH-60は「ギーン!!」という音です。たぶん回っているジャイロは一つや二つじゃないのは確かそうです。さらに油圧ポンプを駆動するとさらに騒音度アップ。これにエンジンが加わると、ICS(機内通話装置)無しでは会話は難しそうです。あと、UHにはフロートが装備されいるらしい。やはり海上救難もあるから、フロートは必須なのだろう。航空法上も海の上飛ぶにはフロートの装備が義務ですし。で、そのフロートはバッテリーのオンオフ問わずスイッチ操作で展開できるらしく、絶対に触らないでと言われた。他にも「右タンク 投棄」などと書いてあるスイッチもあったから、多分左右のタンクがこれで切り離せるのだろう。他はスイッチが多すぎて何が何かわかりませんが。とりあえずワーニングコーションランプが50個以上ありました。ちなみにヒューズには10個も無く、レンジャーでも20個程度。ヘリコプターにはあまり馴染みの無いスロットルレバーは頭上。
 機外の話。背の高いUHには、機体の上に昇るためにステップ、つまり踏み台があります。まあこれはレンジャーにもついています。面白いのがエンジンカウル。機体外側のヒンジを中心にぐるりと回り、エンジンカウルがそのままステップ、というか作業場になります。そして機体上面すべてがウォークウェイ(歩行可能な場所)。作業性が極めてよさそうです。ヒューズにせよレンジャーにせよ、ちょっとして作業でも「脚立もってこーい」でしたし。メンテナンスハッチも多く、エンジンからなにやらいろいろと説明を受ける。とりあえず暖房しかついていないヒューズやレンジャー*1と違って、冷暖房完備。もちろんエンジン消化装置は二つ装備。もちろんパーティクルセパレーターも装備。
 見ていて興味深かったのがヘリコプターの命、ローター、およびハブ。ブレードは長く、大きい。ブレード内は加圧式で、万一クラックなどによる漏れがある場合根元のインジケーターで一発でわかるもの。ヒューズなどと比べると極太のピッチリンクのベアリングはスフェリカルベアリングでなくエラストメリックベアリング。他、理解不能テールロータードライブシャフトはレンジャーよりも太いがヒューズよりも細い。というかヒューズのシャフトは何が何でも太すぎる。どのくらい太いかというと、ヒューズのテールブームの太さを二周り小さくした程度です。つまりテールブームの中はほとんどテールドライブシャフト、構造的に別名スーパークリティカルシャフトという強そうな名前を持つ。
 燃料補給口は二箇所あり、一つはF-1の補給のように加圧して給油する場合に使い、もう一つは普通の車のように重力で補給する場合に使うそうです。外部燃料タンクにも補給口があるそうです。見てませんが。


 次はU-125。U-125は整備士がいないため概要だけ。こっちもコックピットに乗せてもらいました。頭上から後ろのいたるまで並ぶ無数のサーキットブレイカー。もともと飛行機に関する勉強は独学なので、初心者目にはよくわからなかった。スラストリバーサーのやり方がわかった以外理解できたことは無し。…UH-60と比べると驚きの短さ。好きな機体なんですがネタを見つけるほどの知識は私には無かった。


 その後、いろいろと話を聞いた後、先生と喫茶店で将来を語り合い、帰路に着く。が、帰りは雪が降るほどの寒さ+相変わらずの強風。そしてその足でバイト。なにかと忙しい一日でした。

(追記)
 その後、まさかこの機体と同種の機体を整備することになるとは、思ってもいなかった。

*1:オプションで冷房もあるらしい