高取得集団「ジエータイ」!?


 自衛隊は言わずもがな公務員だが、正式には特別国家公務員という立場である。が、つまりは公務員である。
 世間一般では「公務員=高所得」という概念が刷り込まれており、民間人からはことあることに給料を減らせと言ってくる。ちなみに自衛隊の初任給は168000円。高いか低いかどうかの判断は任せるが、忘れてはいけないのは「これから一銭も増えない」ということ。
 自衛隊には手当というものがあるにはあるが、受け取れる人が少ない。世間一般では残業したり休日に出勤すると気持ちでもお金がもらえるかもしれないが、自衛隊ではそれが無い。つまり、どんんだけ働こうと給料には一切関係しないのだ。ちなみに手当がもらえる人は、例えば船の乗組員。これは乗ってるだけでかなりもらえます。ただし貰えるのだが海の上では使い道がない。次に空を飛ぶパイロットなど。これはもっと貰えるのだが、知り合いのパイロットはお小遣い2万円だった。この二つは両方もらえるので、ヘリ搭載艦の航空機搭乗員はウハウハである。もちろん手当の理由は危ないからなので素直に喜べるはずがない。ほかに不発弾解体するときとか空挺降下する時とか、軽く一般人の常識を超えたことをすればお金がもらえます。一番貰いやすいのが離島に勤務すること。もちろんこうなったらお金の使い道はない。
 手当をもらえる人たちの話はともかく、自衛隊員のほとんどが手当ても無く、生きている。なんぼ働いても給料が同じなのは、自衛隊は24時間勤務なので。だとすると、これを自給に換算すると…高校生のアルバイトの時給もビックリ。
 つまり、実は自衛官の大半は思っているほど裕福でない。ほとんどの自衛官が言うのは、決して割の合う仕事ではない。確かに、自分たちがどんなに活動しても利益があるわけでなく、逆に動けば動くほど出費がある。それでも存在するのは、社会の時間に習ったとおり。

 唯一の利点は衣食住がタダということ。服は必要最低限支給され、飯は食堂に行けば食べられ、素敵な寝床も確保できる。ただしこれにも裏話があって、衣服はちゃっかり給料から天引きされてて、飯もまた然り。寝床は定期的に点検があり、インテリアに凝るなどというのはもってのほかで、テレビを置くということさえ(表向きには)許されない。定期的、または抜き打ちに点検もある。もちろん一人部屋というものは一生お目にかかれない。どんなに頑張っても二人部屋までだ。欲しければ階級重ねてマンションに住むしかない。結婚したら借りれる国のマンションは驚くほど格安だが、値段相応のボロさで、住んでいる人間がみんな自衛官だから階級がものを言うから案外住みにくいのだとか。そして基地の外に住む場合も、緊急事態に基地に行ける場所でなければならない。
 朝はラッパで起き、夜は無情にも消される電灯とともに寝る。月の半分ほどは外出せずに基地で待機。また、外出していようが、寝ていようが、風呂入っていようが、便所にいようが召集がかかれば集合。プライベートのない毎日を、命のままに過ごしていく。


 応急待機員、いわゆる当番のある日、いつ召集がかかってもいいように待機していると、同期が訪ねてきた。二人とも腹が減り、私は何かないかとロッカーを漁る。自衛隊名物缶飯が出てきたが、好んで食べようとは思わない。するとその奥から市販の肉の缶詰が出てきた。
 賞味期限よし!嬉々として缶をあけ、同期と食べようと勧めるが、同期は乗り気ではなく、私一人で食べることに。それを見ていた同期は…
「これでいいのジエータイ…」
 と、なにか人生悟ったかのように呟いた。

 部隊勤務ももうすぐ一年。生活レベルはこれ以上進展する気配はない。