デンジャラスなか・お・りⅥ

自分たちで考え、自分たちで解決する。
これが本当の「学習」。
圧力系統の漏れ、自転車のギアの調整、そしてカレーの謎…

 もともと実習の時間が一時間しかないと言うのがもともとおかしかったのだ。もう慣れ始めた5時間目の授業、それがこの日唯一の実習だった。


 今日の実習内容はピトー、静圧系統のテストです。航空機を少しでも興味のある方は「ピトー管」と言うものを聞いたことがあるでしょうが、それと静圧口と呼ばれるものに圧(正圧、負圧)をかけて、系統が正常に作動するかを検査する作業です。この二つを使って航空機は速度や高度などを知ることができるのですが、逆をいえばそのどちらかが正常に作動しなければ非常に危険です。まあ機体を飛ばすことのない整備科学生にとってはまだ関係のない話ですが。

 ともかく1時間授業、時間にして90分の授業が始まる。専用の測定器*1をピトー管と静圧口に接続し検査開始。まずはピトー系統に圧をかけてみると正常に作動。が、もう一方の班は見事に漏れがあったらしく修理に追われていた。こちらは順調に行くかと思えば、静圧系統に漏れが発見される。別の班から「ピトー系統を移植させてくれ」と言われたが、「なら静圧系統をよこせ」と言いたくなったが言わなかった。時々軍事関連で聞く「共食い整備」があるわけがなんとなく分かった。実際本校では使わなくなった機体から共食い整備が行われてますし。というか、自衛隊からもらった機体は完全に部品取り用です。可愛そうなOH-6。
 トラブルシューティングが短時間で終わるわけもなく、授業時間は終了する。授業時間が終了すれば学生たちは授業を受ける義務はなくなる*2。だが、そこは整備科、伊達に機体いじりは好きじゃありません。用事がある人や公共機関を使って通学している以外全員残る。
 静圧系統に負圧を与えると高度計の指針は振れていく。同時に高度の変化を知らせ昇降の指針も振れる。しかし、ある一定の負圧、高度300ftあたりになると昇降計の針はマイナスを指し始め、高度は減ってゆく。ある一定以上の圧をかけると漏れるらしい。普通のタイヤなら水にでもつけて穴を探すところだが、航空機が入る水槽など本校にはない。やろうと思えばどこかの航空機耐圧試験用の水槽でなければならない。もちろんそんなこと非現実的なので、せっせと漏れを探す。
 計器盤の裏、静圧口から計器に伸びるチューブ、そして静圧口。結果、静圧口と計器を結ぶチューブの静圧口取り付け部分から漏れていた。もっとも厄介な場所であるが、まだ修理の余地がある場所である。メンテナンスパネルを開けてせっせとシーラント*3で取り付け部を補強するが、うまくいかず。結局学校の閉門時間となり強制解散。別の班も同じく修理を終えず解散。
 傾いていく日差しの横で、みんなで協力して不具合をトラブルシュートする。自分たちで考えて自分たちで解決していく。ペンとノートを使った勉強よりも遥かに頭を使い、より有意義な時間だったと思います。やはり勉強は自分からやってなんぼです。
 すでに日も沈んだ時間に帰宅。今日はさすがにみんなお疲れのようで、どこかに食べに行く人が多い。私はカレーがあるので行きませんでしたが、友人がそのカレーに寄られやってきた。
 んが、夏場と言えばこれ、表面が白いカレー。おかしいな、蓋をしていたから埃なんて落ちてこないはずだぞ。おかしいな、カレーとは違う匂いがするぞ。おかしいな、おかしいな。…考えた結果、火を通せば食べれるだろう。火を加えたら今度は妙に水っぽくなった。おかしいな…。友人には一応「腐っているかもしれないかもしれない*4から、食って腹壊しても知らんぞ」と念を押させ、口直しにいろいろと用意して食事開始。ありがとうマヨーネズ、君はあらゆる味をかき消してくれる。
 その後部屋のスペースの多くを占拠している自転車を友人が目をつけ、整備を手伝ってくれるらしい。これはありがたい。二人でやれば作業は驚くほど順調に進み、ギアはきちんと調整される。調整上邪魔だったアウターギアにつけられたガード(名称不明)は取り外される。黒いギアがむき出しとなり、無骨ながらスマートな概観となった。ちょっとワイヤーにたるみがあるが気にしない。私にとっては十分及第点。手伝ってもらった御礼に私の至福のデザートであるフルーチェを、好評ではなかった。なら手前の腹に入ったフルーチェ返せ。
 日付はすでに変わっている深夜に友人は帰り、私は帰ったのを確認すると何かと忙しかったこの一日を終えたのだった。

*1:一台100万円

*2:授業料払っていないため

*3:パテのようなもの

*4:というか実際腐ってるが