青空に響くアリソンエンジン

格納庫内はまだ涼しいのだが…

炎天下の下振動調整
いつもより大きな振動の機内で、私はただいるだけ。
それにしても、やっぱりジェットエンジンはすごいよ


 晴れ渡った青空は、夏の風物。澄み切った空は、何もかも吸い取ってしまいそうだ。命さえも。


 これまでいくら暑いと言っても、整備実習中は格納庫内で行っていた。日差しをさえぎり、そして扇風機も使うことができる。だが、今日はその恩恵を受けれない。
 夏の日差しとはこうも強力なものだったろうか。エプロン*1の上で立ちすくむ私は、ただ汗をぬぐうことしかできない。なぜわざわざエプロンにいるかと言うと、今日はテールローターの振動調整なのです。振動を測定するにはエンジンを動かさねばならず、そうなると格納庫なのかではできないのである。航空機は熱伝導性の良いアルミ製である。日差しを浴びた機体はみるみる熱を持ち、ローターブレードはフライパンと化す。
 動かない体に鞭をうちセンサーをとりつけ、飛ぶわけではないが飛行前点検。とにかく今は涼しさがほしい。とっととエンジン動かしてローターのダウンウォッシュ*2を全身に浴びたい。が、こういう日に限って灼熱のコパイ席で先生の補佐になる。計器板を見るとOAE*3は軽く30℃を超えていた。つなぎを着ているので、体感温度はさらに高い。まあうれしい事に、今日はドアを開けたまま運転するので意外に涼しかった。
 何もともあれGPU*4と機体を接続し、パワーセレクタをEXTにしたりなんだでスターター始動。エンジン回転数が上がり、燃料に点火、TOT*5が跳ね上がり、エンジン回転数もさらに上昇する。アイドル回転数でスターターを切り、エンジンは自力で動けるようになる。アイドル出力とはいえダウンウォッシュはかなりのもの。ちょっとした扇風機なんて目じゃない。まあヘリはストーブの化け物を動力にした扇風機みたいなものですが。
 コパイ席でやることは簡単である。計器を見て異常が無いことを確認し、サイクリックスティックとコレクティブピッチレバー、そしてアンチトルクペダルを動かさないように保持すること。今日は風が吹いているので、ローターが風にあおられないようにするためです。
 それにしても今日は結構揺れる。「おいおい大丈夫なのか?」と言うぐらいである。まあ今日はそういう授業ですが。みんなはテールローターの振動をストロボライトで確認しているらしいが、コパイ席からは見えない。戦闘機とかみたいに後方視界は無ければ、当然MH-53みたくバックミラーなど当然付いていない。ダウンウォッシュの風と機体の振動を肌に受けながら、のほほんと過ごす。ただ、こうやってスティックといった操縦系統を触っていると、振動と言うのは結構ある。テールローターに直結しているペダルはビーンという高周波振動が、もちろんメインローターに繋がっているスティックやレバーも同じ。これでは長時間操縦するパイロットは大変だろう。「ヘリコプター整備士の仕事は汚れと振動を取ること」と先生も言っていましたし、振動取りの重要性がちょっとわかる。
 その後、先生にテールローターの出力を増すためスロットルをひねるように言われる。ええ!?スロットル触っていいんですか?ともかくこれは初めての経験。レバーについたスロットルを少しずつ捻ると、敏感にエンジンが反応する。トルク系が上がり、エンジン回転数がさらに上昇する。私の原付なんて比べ物にならない反応よさと出力。さすが400馬力。出力が上がるとダウンウォッシュはさらに強くなり、振動もより高周波となる。そしてみんなの振動計測が終わったらしく、エンジンカットまでやらされることに。アイドル出力で2分間クーリングし、スロットルを戻して燃料カット。するとエンジンの回転数が急速に低下し、エンジンは停止する。ローターが停止してから機体から降り、振動調整のための作業に移る。
 調整後もう一度エンジン始動。今回は機体の外で計測。外のダウンウォッシュもかなりいいもの。騒音がひどくて耳栓なしではしんどいですが。無事に振動も取れ、時間がかなり余ったので、班の一人の思いつきで機体洗浄をする羽目に。ちょっと前に洗ったばっかりだから、正直あまり意味が無い。結局全員水浴びする羽目になり、びしょ濡れで帰宅することに。


 そういえば今日の昼食は大変だった。食堂は見事に売り切れ。しょうがなくコンビニまで買出し。ココ最近クロスバイクだから、そこまで苦にならないかなーと思ったらそうでもない。暑いからそれだけで疲れる。帰りは友人の原付に荷物を載せてもらって登校。友人たちの分を含めたくさん買ったはいいが、気持ち悪くなって自分の分はあまり食べれなかった。しかし、これが翌日思わぬところで役に立つことに。


(追記)

 昨晩、脛毛が気になった何箇所か切ってみたら、かなり不自然になってしまう。このままではろくに短パンで外歩けないので、いっそ髭剃りで剃りあげてしまう。出来上がった滑滑の足。男でこれはないだろーと思いつつ、どうしようもない。プラスで考えれば涼しい+空気抵抗の減少。境界層板(毛)が無くて空気は剥離しやすそうですが。

*1:駐機場

*2:ローターが打ち下ろす風

*3:機外温度計

*4:地上電源

*5:エンジン排気温度計。顔文字ではない