風化できない思い出達

高校時代の仲間と高校時代の担任と飲み会の日。
思い出話に花が咲く中、大事件がおきる…かも

 思えば高校を卒業して一年と五ヶ月。三年間もの間通っていた学校も今では思い出となり、今はただ嫌な思いであふれるその思い出を早く消したい今日この頃。



 高校時代の友人たちと話していると、どうやら今日は高校時代の担任と飲みに行くらしい。人は多いほうが盛り上がるだろうから、参加。
 幹事よりも早く集合した我々*1は、近く*2のファーストフード店で思い出話に花を咲かせる。そんな友人たちとも先日会ったばかりなのだが、思い出と言うのはゴキブリのようにどこからともなく沸いてくる。ただ、野球大好きな二人の高度な話になると、私はただ明後日の方向を向いてコーラをすすることしかできない。昔は好きだった野球、なぜ見なくなったのだろうか…。そう、それは太陽が容赦なく大地を焦がしたあの夏の日……ああ!思い出したくない!
 全員集合で夜までぶらぶらするが、久しぶりに会ったというのにいきなりある二人が険悪なムードに。こういうときあらゆる状況で中立の立場に立つ永世中立国な私は大変である。二人の関係を悪化させないよう二人をなだめ、時には接触そのものを避けさせる。見てみぬフリをする友人の背中がいつもに増して憎い。この関係は高校時代から同じ。少しはみんな大人になってほしいもの。まあ私が子供だからこうやって仲裁しちゃうんでしょうけど。
 日も暮れだした時間。学校まで担任を迎えに行くので、見慣れた駅で下車する。これから数キロの上り坂を駆け上がるのが日常であった*3が、そこはもう20歳(私は遅生まれなので19歳ですが)、文明の力を有効利用しタクシーで学校へ。
 学校に着いた我々を待ち構えていたのは、見慣れない校舎であった。動物で例えるとナメクジとカタツムリの違いのような、戦闘機で言うならばF-15CとF-15Eの違いのような違和感。ぶっちゃけていうと増設されていた。しかも見晴らし自慢の食堂の窓の前にででーんと。食事中いったい何を見せようと言う魂胆なのだろうか…。これじゃこの増設した校舎とその中しか見えないじゃないか。聞いてみると、女子用校舎らしい。日本の新たな教育方針、もとい狂育の波はこんなところにまで届いていたらしい。
 ともかく世話になった先生と顔をあわせ、久しぶりなのに重い話になったりとしながら担任のいる職員室へ。卒業して一年と五ヶ月、短いようで密度の高い生活。毎日航空整備士になるための勉強に明け暮れ、気づけば学生らしい幼い顔立ちから、引き締まった大人の顔に変わっていた。さあ、成長した私を見てくれ!と思いながら望んだ再会。そして、先生から私に対し第一声。


「お前、変わらんな」



 なんだかんだで飲み会場到着。先生から在学中のぶっちゃけトークなどを聞きながら時間が過ぎていると、もっと飲め飲めと進めていた友人がスプラッターモード*4になってしまった。もはや楽しく話せる状態じゃないのでテーブルを掃除したら店を出て落ち着かせる。で、タクシーを拾って乗せたら強制解散。どたばたで取り残された私ともう一人は呆然と立ち尽くしていた。
「帰るか」
「そーやね」
 ふたりでとぼとぼと近くの駅(徒歩10分)へ向かう。今日は一体何だったのだろうか?一日を振り返りながら我に問う。
 嬉しいことから悲しいこと、当然だがいろいろあった。そして一日を通してあったのは、まとまらない意見と突然の終焉。そう、物事への過程は長いが、終わりは唐突に現れる。そういえば、高校時代もそうだった気がする。遊びに町へ行けばどこに行くかで意見が分かれ、すぐに論争になる。決まったと思えば「用事があった」や「眠い」などで解散していく。そんな毎日。先生から言われた第一声、「お前、変わらんな」はあながち間違えではないが、正確には「お前"達"、変わらんな」でしょう。結局みんなあの時のまま、根本的な部分は変わりようがない。卒業と言うもので終わったと思っていた高校生活だが、終わりと言うより節目だろう。結局こうやって集まれば。心はまたあの時と同じ"学生時代"に戻る。それは当然のこと、過ぎ去った時間は戻らず、出来上がった思い出は変わらない。その積み上げた思い出という土台の先にある自分達は、成長して新たな思い出を作ったとしても、根底にある思い出は変わらない。つまり…。

「すまん、ちょっといいか?」
 友人が立ち止まった。月明かりに照らされた友人の顔からは冷や汗が流れ、顔も心なしか青かった。
「どうした?」
「近くに公衆便所あったっけ?」
 ああ、なるほどmそういうことか。時間も時間だ、多くの店はもう閉じている。そして、駅へと続き道には何もない。私達は来た道を引き返し始める。


 つまり、あのときの自分達は、消えることはない。いや、消すことはできない。例えそれが良い思い出であろうと、嫌な思い出であろうと。
 そう簡単には変わらない、変られない私達の間柄。時がそれを風化させても、消えることないのだ。



 しかし繰り返そう。それでも今はただ嫌な思いであふれるその思い出を早く消したい今日この頃。早く風化しろ。

*1:といっても私は含め3名

*2:といっても徒歩5分

*3:山の上にあるので

*4:何なのかはご想像に任せします