富士山攻略戦 前夜祭

あの向こうの富士へ

 出発は明日だが、トレック乗り乗りの友人宅から出発するので前日の内に移動して一泊。
 出発前の熱い思いを夜空の下語り合う。さあ、寝て目がさめれば明日は出発だ。


 本当は明日朝合流する予定だったが、出発は早いほどいいだろうと思い、友人トレックに連絡して一泊させてもらうようにした。朝合流が遅れてグダグダになることを危惧したが、それよりも走りたかったのもある。
 のだが、問題が発生した。

「よし、手前ら体力訓練だ」

 私は自衛隊に所属しているのだが、基本的にみんな体育会系である。運動するのが好きで好きでたまらないのであろう。ゴールデンウィーク前で仕事もほとんど終わり、手を余らせていた人間を集め、待機員を残して運動開始。出発を前に地獄の運動が始まることとなった…。
 ずたぼろになって隊舎に戻り、出発の準備。はじめはウェストポーチだけで行こうと思ったが、どう頑張っても荷物が入らないので、おなじみのメッセンジャーバッグ「ティンバック2」を使うことにする。こいつ、便利すぎて非の打ちどころがねえ…。
 トレックの家が分らないので、一旦相模サイクルに集合して誘導してもらう。できれば出発前にリュックやサイクルジャージを買っていきたかったが、この日は水曜日。自転車屋の定休日である。諦めて家に行く。ロードバイク二台で超高速で帰宅。
 友人宅といっても社宅である。築何年か分らないぐらい古い建物で、友人いわく昔の学校みたいな場所。明らかに平成の作りではなく昭和の作り。でも既視感があるのわなんだろうと思ったら、じいちゃんばあちゃんのアパートがこんな作りだった。部屋は6畳一間、風呂トイレなどはすべて共用。あんまり狭いので部屋の中に自転車置くのは難しい。しかし駐輪所で野ざらしにするのは気が引けるので、友人は部屋の前の廊下に放置プレイ。それにならって私も通行の邪魔にならないようにクォークを壁に立てかける。
 一息ついたら近くで食事を済ませ、その足で食糧の補給。再び社宅に戻ったらお菓子と飲み物を持って屋上へ。
 春が訪れたといってもまだ少し肌寒い。でもそんなことを忘れるぐらいとにかくいろいろと話し合った。空を見上げると満天に広がる星空が…見えない。

(岐阜の冬の夜空)
「岐阜にいる頃は見えたのにな」
 とつぶやいた。友人もそれに同意した。このトレック乗りの友人は実は専門学校時代からの知り合いである。しかも同じ寮だった。まったく世の中何が起こるかわからない。専門学校時代はバイクを乗り回していた友人は、今自転車にはまっているのだ。寮の駐輪所で私は自転車を、彼はバイクをいつもいじっていた。それぞれ乗るものは違うが、互いにツーリングする者同士いろいろと話したものだ。そんな彼が突然メールで自転車に乗ると言ってきたのだ。そして、彼の勤務先は実は私の勤務先から眼と鼻の先の距離にあったのだ。ほんとに、世の中何が起こるかわからないのである。

 こんな二人が明日から富士山一周をしに走り出す。何が起こるかわからないが、全力で走りぬけよう。

オマケ

友人の部屋にあったフィルムカメラ。もらいものらしく、アンティークとして置かれていた。レンズも腐って使えないが、フルマニュアル操作やシャッター音など、楽しませてもらった。