PowerShot SX1IS 試写


 帰るなり言われたのが、買ったカメラが綺麗に映らないとのことだった。
 カメラは画像のSX1。天下のキヤノンで撮った写真が悪いわけがない。
 そんな馬鹿な。と、撮った画像を見せてもらうと…うわ…。
 きっと撮影者が悪いんだ、と言ってしまったので、SX1の性能試験に行くこととなってしまった。
 結構前に、親から「カメラ買おうと思うけど何がいい?」という旨のメールが来た。脊髄反射で「DMC-G1」と答えようかと思ったが、「EX-FH20」を推しといた。「やっぱりキヤノンニコンだよね〜」と見事にスルーされた。
 キヤノンなら今G10が熱い!と推しといたが、やっぱりスルー。結局店員オススメのこいつをつかまされていた。なんのためにメールしたねん。

 SX1はよくある高倍率ズーム機。コンデジに無理やり高倍率ズームのレンズをくっつけたもの。つまりコンデジの小さな映像素子に、無理な設計故に性能の悪いレンズがくっつている。なんかすんごいズームできるし、外観は一眼みたいで綺麗に取れそう!という、自転車で言うとホームセンターに置いてある自称MTBのような、そんな位置づけのカメラ。
 一応キヤノンのカメラはIXY910ISを経験しているので、操作は問題なし。操作性はそのまま。良くも悪くもそのまま。
 問題となった親の写真を見て驚愕。ほとんどピンボケで、露出もホワイトバランスもぐちゃぐちゃ。なんだこれは!と思い、設定をみると、なかなかとんでもないことに。シャッター半押しでなくとも常時オートファオーカス+コンティニュアンス(動体追尾)AF。なんだそりゃ。シャッターボタン半押しで一度だけオートフォーカスに戻す。
 親はカメラには疎いので、すべてオートモードで撮影したが、それにしてもそのオートモードは頭が悪い。IXYのオートモードは全然問題ないのだが、どうなっているんだ?というか、オートモードは本当にオートモードで、びっくりすることに設定が何も変えれなかった。ISOも露出補正も、何もかも自動だ。逆に使いづらい。
 まあグダグダ言うよりは実際の性能を確かめたほうがいい。

 しかし撮影に出かけて早々に問題発生。まるで楽しくない。細かいところで操作性が悪く、撮影のレスポンスが悪いのだ。IXYに比べれば…といいたいが、操作性は一緒。IXYなら妥協できるが、デカイのだからそれなりの結果を期待してしまう。
 まずオートフォーカスが決まる確率が低い。フォーカスは中央一点だけにしたり、かなり設定をいじったのだが、なんかこう決まらない。GX200の液晶に比べると貧相な液晶では、マニュアルフォーカスも難しい。撮影終えて、成功写真は3割程度だったろうか?ちょっとこれは不良かもしれん…。

 そしてキヤノンお得意の操作系、コントロールホイール。ダイヤルの代わりに十字キーの周りにホイールがついていて、これをクルクル回すことでいろいろな操作をするわけだ。が、こいつがとにかく使いにくいのだ。IXY910ISにも実はこの前身となるものがついていた。そちらはipodみたいに静電式で、感度の悪さもあって完全にオマケ機能で、実際使うことはなかった。その後物理的にホイールを回転させるようになったのはいいが、問題はこれでしか操作できなくなってしまったこと。回転させるのはいいが、誤作動を防ぐため遊びが設けられている。この遊びが問題なのだ。たとえば露出補正。プラスに1/3持ち上げたいと思った時、ホイールをちょっと回すのだが、ちょっと回した程度では遊びと判断される。でちょっと大きく回したら2/3ぐらいまで行ってしまう。戻そうとしたらあっち行ってこっち行って悲しくなる。絞りやシャッタースピードもこれを使って設定しなければならない。ちなみにIXY910ISの後継機、920のコントロールホイールは使いやすかった。設定一段ずつにクリックがあり、使っていて爽快だった。が、なぜこの機種はそんな素晴らしい技術を採用しなかったのだろうか…。
 続いてEVF。一眼のようにファインダーを覗いて撮影できるようEVFがついている。DMC-G1の超絶EVFと比べるようなことはしないが、やはりオマケ機能。この日日差しが強く、背面液晶の見づらさもあって使用したが、使えなくもないレベル。しかし、せっかく液晶がフリーアングルなので、無理して使う必要なない。これを見て案外GX200EVF、VF-1って結構画質良かったんだな、と最近気づいた。
 また、手ぶれ補正の利きはイマイチ。シャッタースピードが遅いと素直にブレます。何段分ぐらいの効果か分からないが、E-30ほどの効果は実感できなかった。
 細かいところだが、付属のレンズキャップのつくりがチープで、もうレンズにひっかけるバネがへたっていた。これはいつ落としてもおかしくないレベルで、素直に買った方がいいかも。

 さっきからボロカスに言っているが、そのくらい使いにくかった。本当に同時期のコンデジのIXY920ISなんかはGX200と購入を争ったほどいい機種だったけに、なんだこれは、という感じだ。どちらかというとオートで撮るカメラなのだろうが、その結果があまりにも良くなかった。やはりウリはフルHD動画なので、そちらを使ってくれということか?実際そちらは問題なかった。

 一応弁護しておくと、このサイズに29〜580mm相当という広い撮影範囲をカバーしているのはすごい。フォーサーズでこの範囲をカバーするのは、少なくともレンズは二本以上いる。レンズ一つ分の荷物でこれだけの撮影範囲をカバーできるので、フットワークは確かに軽い。
 のだが、途中から一緒に持って行ったGX200に完全に出番を取られてしまったが…。

 何を見ていいカメラと判断するのかは人それぞれだが、操作系の弱さが気になった。何を設定するにもサクサク動かないので、撮影の意欲を殺してしまう。これは撮ろうとさせる形をしているが、撮ろうとさせるカメラではない。
 それっぽい形をしているが、大きなコンデジ。それが一日使ってみた感想だ。オートフォーカスとオートモードがもうちょっと頭良ければ、かなりいいカメラに化けると思うよ、本当に。なんだかんだいって、ここに掲載している写真ぐらいは誰でも撮れるわけで、それでいいのならいいわけで。好き嫌いなんて人それぞれだ。