憧れた場所


 なぜかは分からない。ただ、空を飛ぶ乗り物に憧れていた。少年時代の自分にとってその翼ははるか彼方にあり、点にしか見えないほど上空を飛ぶ航空機を眺めることしかできなかった。この写真を撮ったころは、そんな、点にしか見えないものが触れるほど近くにあることに、興奮していたのを覚えている。
 時は経ち、今は見る側から見せる側へと立場を変えた。疲れたら航空機のタイヤで腰を休める日々。あくまでソレは商売道具にすぎなくなっていた。あの頃の感動は、どこへ行ってしまったのだろうか…。
 まあそんなことはどうでもよくて、実家に帰った際、昔撮った写真を手に入れたのでいくつか放出。プリントしたものをスキャナで取り込んだものなので、画質はちょっと悪いが、ネット上に晒す分にはあまり差はない。というかどこに行った、ネガ。

 当時の撮影機材はニコン一眼の何か。まあOM30より綺麗に映っている。個人的に航空機単体で撮るよりも人と絡ませたほうが画になる。と、少年はそこで働く人々に憧れていたのだが、実際にそこに立つようになってしまった今、もう同じように見ることはできない。それは非日常ではなく日常にすぎなくなってしまった。

  唯一の救いは戦闘機整備員でないこと。まだこちらは昔のような目で見ることができるのだ。もし運命のいらずらで戦闘機の整備士になれる機会があったとしても、ちょっと遠慮するかもしれない。
 人生で分かったことは、趣味や好きなものを仕事にするなということだ。どんなことでも仕事になれば嫌いになってしまう。けどもともと好きだから、今でも嫌にならずに続けていられるのかもしれないが。