輪行しない折りたたみ自転車はただのミニベロだ

折りたたむ

 「輪行」という言葉をご存じだろうか?普通の人にはあまり聞きなれない言葉だろうが、自転車を電車(まれに飛行機)に乗せて移動することである。これをすると何ができるかというと、行動範囲が劇的に広がるのである。

 ロードレーサーに乗って、一日頑張って200kmほど進む*1。帰ることを考えると半径100kmを移動できる計算になる。しかし、それ以上はどうしようもない。となると次は車(通称トランスポーター)に乗せたりして遠くに運び、スタート地点を変えればまたそこから半径100km*2の行動ができるのである。
 だが、車を使った移動は思ったよりも便利ではない。まず車に積むのが難しい。ワゴンならそのまま乗せれるが、それ以外は専用のキャリアをつけて車外に固定する必要がある。そして何よりも、スタート地点に戻ってこなければならない。怪我しようが、自転車が壊れようが、天候が悪化しようが、だ。さらに車まで戻ったら戻ったらで、疲れた体に鞭打って長い道のりを帰る必要がある。
 その点電車は駅まで行くのが面倒だが、結構気ままに移動できる。不測の事態が起きれば近くの駅によって、電車で帰ってしまえばいいのである。また、なにもはじめから電車を使わずとも、何も考えずに走って、日が落ちてから電車で帰るという手段も使える。ちょっと山が越えれそうにないなら数駅電車でショートカットしたり、使い方はいくらでもある。
 だが、最大の問題が無きにしも非ず。それはもちろん自転車をどうやって持ち運ぶかである。

 はい。これが解答。「何これ?」と思ったら正しい感覚。「エクストリーム輪行」と思ったら末期症状。これは輪行バッグと呼ばれるもので、つまりは電車に乗せるとき自転車を積めるバッグなのである。日本では(ごく一部の路線を除いて)自転車を車内に持ち込めないので、こういうバッグを使うことで手荷物にすることができる。することができるのだが、手荷物というくせに占有するスペースは本人をはるかに上回る。写真のバッグはタイオガのコクーンと呼ばれるバッグで、前輪を外して後輪は外さないタイプなのでかなりかさばる。


ちなみに中身はこうなっている。

 実際車内に持ち込むと横にせず素直に立てるのでスペースはだいぶ小さくなるが、そのプレッシャーはかなりのものである。ちなみに一般的には後輪を外すタイプが主流で、もうちょっと小さくなる。だが、周りからの冷ややかな視線は全く変わらない。むしろ後輪にタイヤがあるのでディレーラーなどのメカトラブルが起きにくいこと、タイヤを下にすれば気にせず立てれることを考えれば、むしろメリットの方が多い気もする。
 しかし、やはりどう頑張ってもロードバイクMTBを電車に持ち込むと、周りからの目は気になるが、その辺「貴様らの自転車はこんなことできないだろ!」と間違った方向に自惚れてください。何度かやれば大切なものと引き換えに馴れます。


 とまあだいたい輪行が理解してもらえたろうか。いかにこれが難しいか(周りからの視線的に)。はっきり言おう、実用的ではない。特にロードバイクに乗るとあのピチピチジャージを着ているので、あの恰好で電車に乗るのは罰ゲームというよりは拷問である。ちなみに今までで一番輪行を有効活用したのは、駅伝のコースを自転車で走ったときで、始発で東京まで行き、帰りは箱根から輪行した。それ以外は実家との往復程度である。


 じゃあ実際輪行なんてあまりできないじゃないか、そう思う人もいるかもしれないが、そこで出てくるのが折りたたみ自転車である。そう、あの折りたためる自転車である。世間では9800円ぐらいの「自称折りたたみ自転車」が売っているが、ようはあんな感じのものである。
 断言しよう。折りたたみ自転車は輪行のためにあると!輪行しない折りたたみ自転車はただのミニベロだ!



 自分でもびっくりするほど長い前置きだが、ここからが本題である。私が所有する唯一の折りたたみ自転車、ダホン メトロD6ことハンテンアルミ折りたたみ自転車。こいつははじめから輪行のために購入した。だが、行動半径を広げる使い方ではなく、もっとくだらない使い方である。どこかに買い物に行きたくなったとする。電車まで走って、輪行だ。ちょっと疲れた、数駅電車で移動しよう→輪行だ。パンクした、なら輪行だ。
 攻めの輪行ではなく守りの輪行。ともかくそんな感じ。
 守りの輪行の名はだてではなく、まず折りたたみ自転車だけあって30秒ほどで折りたたんで小さくなる。その後バッグを広げて押し込めば数分で歩行者+大きな荷物に早変わりである。大きさはだいたいスーツケースぐらいだろうか。まあ持ち込めない大きさではない。この大きさって結構重要である。周りからの視線が全然違う。
 しかしそんな守りのメトロにも問題があり、実は肝心の折りたたみに問題がある。見ればわかる。ハンドルの両端についたバーエンドバーと呼ばれるパーツである。これがあると無いとでは走りにかなりの違いが出るので着けているが、これがあるがためにわざわざ折りたたむたびにハンドルを引っこ抜かなければならない。といってもものの5秒もあれば終わる作業である。なのだが、やはり折りたたみ方がスマートではない。そこで試しにバーエンドを外してみると、なんとも情けない姿のメトロが。さらにただ外すだけでも案外ブレーキレバーやらが干渉するので、ある程度ハンドルは高くないと奇麗におさまらない。で、折りたたみ重視のセッティングのメトロは、とてもハンドルの高い、普通のママチャリのような姿となった。たかが5秒のために、背に腹は代えられぬ!ということで元に戻す。
 なんとかならないかと考える。もうちょっと短いバーエンドにするとか、いっそ妥協するとか。だが、現状そこまで不便していないのでとりあえずメトロは当分このままにしておく。そんなこんなしていると、やはり新しい折りたたみが欲しくなってくる。メリダからクォークへ。メインバイクが世代交代し、次はサブバイクの時だ。以前も書いたがやはり、ブロンプトンに惹かれている。だが、実用性だけ考えればMC-1も忘れてはならない。というかMC-1はメトロを買う時にどちらを買おうか迷っていた候補なのだが。


 いつの間にか梅雨入りし、自転車乗りの氷河期を迎えてしまった。降り続く雨を窓越しに見ながら、走れない思いをこんなことを考えて紛らわしていた。

*1:個人差はあり。私は100km越えればオメデトウ

*2:車の移動時間はこの際無視する